ワケがありまして、幕末にございます。





「…っゔ」




彼の髪が数本ハラハラと落ち、男が声をあげたのを聞いて目を閉じた。



男の動きが止まったのを彼は見逃さない。




「じゃあな、俺が楽しんでおくからよ」


「ふふ…やっぱり君、は強いね…。
おしかっ、たなぁ…僕の、負…け」




ヒュッ――




その一振りだった。

その一振りで終わった。


そう、やけにあっけなかった。

あっけなく、男は人間だったモノに変わったのだった。




「愁!?」


「ひ、じかた…」




彼…土方がアタシの元へ走って来る。


…。

………。


ヤバい、これはヤバい。




「待った。
俺は大丈夫だから、待った」


「何言ってんだてめぇ、大丈夫じゃねぇだ、ろ……あ゙?」


「……」


「……」




つまりは、サラシが緩んでるわけで。



…バレちゃった、みたいです。




「……」


「…土方、とりあえず離して」


「あ、あぁ…」




着流しの合わせ目にかけられていた手を離してもらうと、若干体を土方から逸らしてサラシを巻き直した。



そして立とうと足に力を入れる。




「っ…!」


「おい!」




血が足りない。


頭にまできちんと回らない。



ダメだ、くらくら、す…る…―――




そこでアタシの意識は途絶えた。