ワケがありまして、幕末にございます。





「…?」




フと男が手を止め、かと思えば途端に飛び退いた。




「あーあ、邪魔しないでよ。
これからだったのにー」




風を斬る音、刀と刀がぶつかり合う音が響く。



……。


匂いが、した。

いつもの、あの匂い。




「へぇ、そりゃ悪かったな。
すまねぇがそのコレカラを予定してた奴、俺にくれねぇか?」


「ヤだね。
僕、一度狙った獲物は…」


「ぐッ!」


「絶対逃さないから」


「チッ!」




どうやら彼が圧されている様だ。




「、」




アタシもこうしている場合じゃない。



いつの日か丞に貰ったモノを手に構える。


激しく動きあう2人。

下手したら彼に当たるかもしれない。


でも今出来ることはきっと…これだけ。



起きたことがばれないよう気配を最大限に消し、殺気は2人のものと紛れるように流して。



目を開けて、一瞬の間に考える。

これから2人がどう動くか。


先を読み、そして



――シュッ



それを放った。