ワケがありまして、幕末にございます。





「は、なして」




嫌がるようにわざと首筋を見せる。


大体の人はこうすると首筋に注目して頭を寄せてくる。

…と思う。




「残念、嫌がってももう遅いよ」




男が顔を近づけてきた。



…かかった!



おもいっきり頭を男の額に向かってぶつけた。


アタシも多少グラつくが、不意打ちの分相手の方が辛いハズだ。



…隙、出来た!



足を横に振り上げ男めがけてさっきアタシが受けたお返し、と言わんばかりに膝を入れる。



これで男は吹っ飛ぶ。

…と思った。

そうなると思った。


が。




「う、あああああぁ!!」


「今のはびっくりしたよ。
水月に入れられてたら完璧オチてたね」




男は咄嗟に体をずらし、急所を外していた。


そして…、アタシの左肩に刀を突き刺した。


深く、深く。




「ふ、う、ぐあぁ…!」


「僕さぁ、溜まってんだよね。
後で殺してあげるからさ、」




これが経験の差か。

一瞬の判断。


完全にアタシの…




「黙ってヤらせろ」




負け。