気局悩むだけ悩んで簪は買わず違う物を懐にしまった。
やっぱ買えばよかったかなー。
でもお金がなー。
ブツブツ言いながら一歩踏み出した時、ジャッ、とやけに響いた音に瞬間的に体をこわばらす。
誰かと思ったが気配が無い。
一歩、また踏み出す。
ジャリ。
…まかさの自分の音。
でも気配が無いってことは人がいないってことだ。
うっすら目を開けると太陽が沈みかけている。
思った以上に時がた経っていた。
人がいないならぶつかることはないと早足、というより小走りで屯所に向かう。
太陽が沈むのは早い。
急に暗くなってしまう。
アタシは暗かろうと特に関係はないのだが、急いでる理由は他にある。
ここは京の街。
この時代の京の夜は…
「わっ!」
「ってぇなこの…!」
至極
―――危険。



