「…目の調子は、大丈夫なのか?」
「はい、順調に回復してますよ」
「…そうか」
「そういえば、何であの時俺が見えてないって直ぐ分かったんですか?」
地味に疑問だったんですよね、実は。
何も聞かず言わずで手を引いてくれたし。
「市村は、人をよく見る。
相手の目や…気持ちを。
でも…あの時は一切見てなかった…というか、見てるけどどこか虚ろだった」
おかしいとは思いつつも皆と一緒にはけ、その後アタシが居ないことに気付き戻ったのだと言う。
戻って視界に入ったのは不自然な動きをするアタシ。
それを見た斎藤さんは見えてない、と確信したのだそうだ。
「あの時は本当に助かりました。
…それに、斎藤さんで良かった。
今更ですけど、ありがとうございました」
「大丈夫ならそれでいい…」
もしあの時気付いたのが斎藤さん以外の誰かだったら。
アタシは落ち着いていられなかったかもしれない。
若干冷めてしまったお茶をすすり、それからはお互い何も話さずボーっとしてた。



