ワケがありまして、幕末にございます。







「――…丞ー、まだ怒ってんの?」


「誰かて仲間に本気で斬られそぉなったら怒るわ」


「しょうがないじゃん。
丞の気配ってよく分かんないから敵かと思ったんだよ」


「ったく…素直に見えへんとも言わんわ、やけに狙った様に刀向けてくるわ…何やねんお前」


「天才?」


「そないな天才いらんわ」







―――池田屋事変から4ヶ月が過ぎた。


その間に。


6月12日、会津藩士・柴司が非業の死を遂げ、その死を土方、源さん、武田達は本当に…心から悲しそうに、そして悔しがっていた。

21歳という若さで亡くなった柴司と、土佐藩士・麻田時太郎の死。

これらは後の明保野亭事件である。



そして同6月16日。


蛤御門で始まった幕府・薩摩諸藩との激戦に新撰組も参加し、長州藩の惨敗という結果に終わったが、多くの志士達が命を落とした。



また、池田屋事変で亡き人になった奥沢栄助、安藤早太郎、新田革左衛門の3人。


この3人に『お疲れ様』と告げた近藤さんの声が密かに震えていたのは、今でもアタシの鼓膜に焼き付いている。