ワケがありまして、幕末にございます。







ダンッッ!


カンッ!




上手くいけば勝てる




そう思ったのは相手も同じだったようで、床を強く蹴った音も木刀がぶつかり合ったのも同時だった。



アタシが左に切り上げると彼は体をひねって避け、彼がアタシの右薙(ミギナギ)を狙ってくると木刀で防ぐ。



そのまま鍔迫り合いになり、お互いの距離は木刀2本分しかなくなった。



彼も、もちろんアタシも、譲らない。




「…チィッ」




これ以上この状態が続いても体力が減るだけ、と考えたアタシは、相手の木刀を一瞬強く押して飛び退いた。



だが彼はその隙を狙って、開いた距離を再び縮めてくる。



しかしそれは予想済み。



着地した左足を一歩目とし、アタシも彼に向かっていく。





タァン――――