ワケがありまして、幕末にございます。





剣筋がスローモーションで見える中、体は本能的に動く。



左手が上段に飾ってあった刀をひっつかみ、右手は既に柄を握っていて―――




『愁!ダメだ!!』







――ザシュッ

プシャァァ










アルビノで産まれてきてしまった娘に、父と母は愛情を目一杯にくれた。



例え他の誰か…アタシにとっての祖父母や、親戚の人がキモチワルイだの人間じゃないだの、どんなことを言ってても“ハイハイ”と流し、でも内心アタシよりも傷付いていた父と母。



母は元々病弱で、亡くなってしまった時“産まれたこの化け物のせい”と言われても変わらず愛情をくれた父。



大好きだった。


本当に、大好き、だった。