ワケがありまして、幕末にございます。





彼女は持っていた刀を鞘からぬいて降り下ろす。

さっきまでアタシがいた所の畳にそれは刺さっていた。




『…何のつもりですか』


『だから言ったじゃない。
アナタがいなくなればいいのよ』




彼女の目は本気だ。

と同時にやはり狂気に満ちている。


再び構えてアタシに向かって降り下ろす。




『…っ』




着物の袖が一部ハラリと切れる。


やっぱり、強い。

そう、彼女の家は道場を開いていて、剣道で有名な一家。


どんだけ腐っても腕は確かなのだ。




『ちょこまかと…ウザイわね』




それから何回目かのアタシを斬ろうとする刀を避けた時。




『あっ…!』




避けた拍子によろけて生けていた花を倒してしまった。



そのまま後ろに転がるアタシを見た彼女のルージュが再び歪む。









『 シ ネ 』