ワケがありまして、幕末にございます。





この人は父の後妻を狙ってるらしい。アタシの前と父の前じゃまるで態度が違う。


猫を被りすぎた人間の本性を知ると、言葉も出ない程呆れるのものだ。


父も上手く流していたから素を知っていたのだと思う。



そんなこの人がアタシに何の用なのか?

いつもだったらアタシに罵声を浴びせ、一緒に風呂に入る勢いで父の所に行くのに。


眉を寄せてしまうのは仕方のない事だと思う。




『…何か?』




未だ梅を持ったまま、彼女が手にしているモノに注意を向けながら用件を伺う。



すると口元が歪んで真っ赤なルージュが引き延びた。




『私ね、思ったの。
香さんが私を遠慮しているのはアナタのせいじゃないか、って。

だっておかしいじゃない?
せっかく椿さんが亡くなったのに、椿さんと似てる私を好きにならないなんて』


『………』