ワケがありまして、幕末にございます。





このまま絞め殺すぞ、とドスの効いた声の割に、力を込めた土方の腕は優しくアタシを包んでいて。



頬に伝うモノと一緒に堪えられない“何か”を吐き出す様に言葉を落とす。




「本当はあの人と父さんなのに。
血に埋もれていたのは父さんなのに、土方が、土方が血に…!」


「もういい、いいから、泣くな。
お前今日は泣きすぎだ。







…おかげで顔が酷ぇ」


「ハゲろ土方」




だけど…もう顔が酷くなっているのなら、この際枯れるまでもっと酷くしてしまおうか。

心の奥のアタシを吐き出しても良いだろうか。




「土方、俺の刀の名前…」


「確か…白梅、だろ」


「ん。

俺がこの名前付けたのはさ、白い梅が赤く染まったのを見たからなんだよね」




そう、まるで元から赤い花だった様に、紅く。


そのアタシの罪を隠す、名前を付けたんだ。