ワケがありまして、幕末にございます。






『お、とうさ…?』


『ごめんな、……生きろ、お前は、生きろ』


段々と息と息の間が開いていって、(つい)に。



白かったであろう刃は紅くなり、一滴落ちる。

ポタリと。




『…とうさん』




血まみれた空間、泣いていたのは、誰。











「―…ら………ちむら、」



意識の外で声が聞こえる。


でもただ聞こえているだけで。



まだアタシは夢の中を漂っている様。

そして自分で自分を見ているのだ。



幼いアタシはまだ紅に包まれていて。


アタシだけじゃない。

目の前の横たわっている2人も。



そこで気付く。


あれ、父さんじゃない…。



アタシは誰か確める為にフラフラと近付いて。



誰か分かった時、手の力が抜け刀を落とした。




「…あ、あ、」




ソノ人はアタシよりもずっと深い紅につつまれていた。


どこか懐かしい端正な顔と血溜まりの中でも映える艶のある長い黒髪…。




「あ、あぁ、あ」




煙管の匂いが、紅に消されていく。




「あ、ぅああ……!!」









「愁!!」