ワケがありまして、幕末にございます。





「…え、」


「泣くんじゃねぇ」


「は、泣きそうなのは土方…」


「バカが、てめぇは泣きそうじゃなくて泣いてんだよ」




オラ、と頭を土方の胸に押し付けられ、顔を動かすと若干そこが濡れていた。



…マジか。




「でもさ、てめぇ“は”って事はやっぱ土方も泣きそうな顔…イダダダダダダッ」




後頭部にあった手のひらが頭を粉砕する如く強く掴みやがった。



つまり図星か。




「……」


「……」




こんなバカやってるのに涙は止まらない。


顔を上げてないから分からないハズなのに、黒いのはどこか察した様に頭を撫でてくれる。

その心地好さに眠気が襲ってきたけど我慢して口を開いた。




「吉田の腕を斬った時、目に入ったんだ、血が」




目を開けると強烈な痛みがくる事、一瞬開くだけなら大丈夫なこと。

見えてもぼやけてしまうこと。

コンタクトの事は言わずに全て話した。