ワケがありまして、幕末にございます。





アタシは広い庭にただ1人、白梅を手に突っ立って。



戦い方、変えなきゃ。

今のままじゃ簡単に殺られる。



吉田を殺れたのは、偶々(たまたま)、と言うか火事場の馬鹿力的な、とにかく必死だったからだ。



もっと強く。

強く、ならなきゃ。



刀を逆手に構える。


耳で感じろ。

耳で見るんだ。



風がサァ…とアタシの髪、着流しを撫でる。


木はその風に吹かれザワザワ暴れて。




「――…!!」




キンッ!!




咄嗟に逆風に斬った刀に何か固い物が当たった。




――ヒュン



キンッ!!




風を切る音がし、弾いた瞬間、まだ鞘に収まっていた脇差しも逆手に構えた。



また音がする。


鋭く固い物が風を割いていく、音。




キンッ!!




飛んでくる方角に耳を向ける。


もっと、もっと。

集中して、感じろ。




…、…ズ、




動いた…!!