ワケがありまして、幕末にございます。





「ゲホッ、ゲホッ」


「沖田さん、大丈夫ですか?」


「もーやだなぁ!
心配し過ぎですよ、愁くんも土方さんもっ!!」




そうは言ったって…沖田さん、




「俺は知ってますよ、」







――あの時、血を吐いたこと。







「…何のことですか、愁くん?」




…なんか黒いオーラ感じる、すげぇ黒いオーラ感じる。


きっと、黒い笑みをしているに違いない…!




「………元気そうで何よりデス」


「ありがとうございます」




恐い、恐すぎます、沖田さん。




「じゃあ俺、稽古してきます」




沖田さんから逃げるようにそう言い、席を立つ。




「こんな時にも稽古か。
ちったぁ遊べ」


「…じゃあ沖田さん、お大事に〜」


「おいテメェ無視かコラ」


「「アハハハッ」」


「………」


「沖田さん、冗談無しで本当に無理はダメですよ。
沖田さんは俺にとってとても大切な人なんですから。
勿論そこで拗ねてる人にも」


「…うっせぇよ」




土方はそっぽを向いてぶっきらぼうに一言だけ。




「…ホラね、沖田さん」


「フフフッ」





そして礼をして障子戸を閉じた。










「今の愁くん、本気で笑ってませんでしたね」


「あぁ」


「それと、前髪も下ろしてましたね」


「あぁ」




「「(まるで、泣き出しそうな、)」」




2人がそんな会話してるなんて露知らず。



そしてもう1人もその会話を聞きつつ




「(永倉さん、俺に土産はないんやろか…)」



なんて、アホな事を思ってたのも知りもしなかった。