ワケがありまして、幕末にございます。





頬に線が1つ走った。



ダメだ、曇りが治らない。


早くカタつけないと…。



両の手の刀を逆手に持ち、低く構えた。




吉田稔麿。

貴方に恨みはない。

関わりもない。


けれど…ごめん、死んでくれ。

新撰組の為に、未来の為に。




―――ザンッッ

ブシャアァ…




多分、首を斬った。


手応え的には切り落としたと思う。



でも、見えない。

見えないよ、土方…。




「愁…?」


「ケホ、愁くん…?」


「…あ、ごめんボーっとしてた。

それより沖田さん、大丈夫ですか!?」




手探りと気配で沖田さんに近付く。




「愁くん血被りすぎて顔も髪も凄いことになって…」


「お き た さ ん ?」


「うっ…大丈夫ですよ。
ゴホッ、スミマセン、なんか」


「…いいえ、生きてさえいてくれれば、良いんです…」




握ったその手は、赤く血が付いている様な気がした。



それは返り血か、それとも……。