軽く膝を曲げた先生が、胸の前に置いていたボールをおでこの高さまで持っていった。

そこからの流れがとても綺麗で、鳥肌が立った。


ゆっくりと柔らかであって、どこか力強さも感じられるようなそのフォーム。

素人のわたしが偉そうなことは言えないけど、きっとこれは。


先生の手から離れたボールが綺麗な弧を描く。

わたしの喉がゴクリと鳴ったそのすぐ後に、パシンという音が響いた。


「入っ、……た」


しまい込んだはずのドキドキが溢れ出す。

目の奥がジワジワと熱くなって、息が苦しくなった。

全身から力が抜けていく。


カバンが肩から滑り落ちても身動きが取れずにいたわたし。

滑り落ちたカバンが立てた音に気付き、わたしを見つけた先生。


視線がぶつかった瞬間、泣きそうになった。


「見た?」

すごいだろ、と言わんばかりの表情でそう言った先生。

わたしがコクコクと頷くと、先生は子供みたいに顔をクシャクシャにして笑った。