「はーい。写真撮ってもらいたいやつ、持っておいで」
先生が手をヒラヒラと揺らす。
「わーい」
「これで撮って」
「オレも」
「わたしのも」
スマホを持って先生のもとに集まる生徒たち。
「順番ね」
なんて言いながら、先生がチラリと華乃を見た。
華乃は、
「やったぁ。ありがとう」
と言って先生にスマホを渡すと、ちゃっかり藤木くんの隣に並ぶ。
地面に腰を下ろした先生は、預かったスマホを自分の膝の上に置き、
「撮るよー」
と言いながら順番に撮っていく。
そんな先生の姿を、わたしは少し離れた場所から眺めていた。
この何気ない風景を、かたちに残せたらいいのに。
先生の隣に並んだ自分を、かたちに残すことができたらどれだけいいか。
きゅっと噛んだ唇を、手にしていたメガホンで隠した。
「あれ?和葉は?……あ。いた。和葉ー!和葉もおいでよー!」
なんて。
他のクラスにちゃっかりと紛れた華乃が、おいでおいでと手招きしている。
「先生も一緒に撮ろうよ。あ。森先生、撮ってくださーい」
誰かがそう言うと、男子生徒が近くにいた副担任にスマホを渡しにいく。