「返してよ。まだ飲んでるんだから」
華乃からパックのりんごジュースを奪い返すと、
「じゃあ、それ見せて」
と、読んでいた雑誌を奪われた。
「ちょっと。なにすんの、」
「だって、ショウくんが」
「ショウくんが?」
「あやのんのこと、かわいいって言ってたの。
だからね、あたしもあやのんみたいにしようかなぁと思って」
胸まで伸びた髪を手ぐしで整える華乃。
「そっ…、それはダメ!」
「えーっ、なんでよぅ」
「……だって、」
あやのんは、わたしが毎月購入している雑誌の専属モデル。
わたしたちと同じ、高校1年生。
黒髪のショートボブにしてから、人気急上昇。
偶然にも、わたしと同じヘアスタイル。
あ。
偶然にも、っていうのは嘘で。
わたしと同じ、と言ってしまったのは、あやのんに対して失礼だった。
本当のところは、わたしがあやのんのマネをしたという感じで。



