「あー、ほんとにヤダ。転んだらどうしよう」
「網に引っかかったらさ、サイアクだよね」
「平均台、踏み外したらどーすんの」
「っていうかさ。ハードルにぶつけるよ。スネにでっかいアザができちゃうよ」
入場門からスタート位置に移動するまでの間、後ろから聞こえてくる華乃の声。
そのせいで余計に緊張が増してしまう。
上手に跳べなかったらどうしよう。
先生の前で転んだりしたら。
格好悪いところなんて、見られたくないのに。
ううん。
わたしのことなんて、きっと見ていない。
わかってるのに、この緊張はなくならない。
「………吐きそう」
胃のあたりがムカムカしてる。
どんどん自分の番が近づくにつれ、心臓の動きが速くなって。
「和葉、がんばって!」
華乃の声援にも、振り向いて応えることができなかった。
スタートしたら、緑色の網をくぐって。
テニスラケットでボールを運んで。
平均台を渡ったら、とび箱を越えて。
袋でぴょんぴょん跳んだら。
最後の最後に先生の前でハードルを。



