「あー、緊張するっ。心臓が、すっごいバクバクいってる」
胸に手をあてた華乃がぴょんぴょんと跳ねるたび、ツインテールにした髪が揺れる。
「………わたしも、」
体育祭なんて、陸上部とか野球部とか、運動部の子が活躍する行事であって、運動が苦手なわたしや華乃にとっては憂鬱そのもの。
リレーとか、そういうものに声援をおくってるほうが気楽で楽しい。
「あたし、ハードル苦手なのに」
手首に巻いた学年カラーの黄色いハチマキを、落ち着きのない様子で触る華乃。
「わたしだって、」
後ろでひとつに束ねた髪をほどいては、また束ねるわたし。
緊張している理由は他にもある。
グラウンドでは、既に障害物競走の準備を終えた委員会の生徒や先生たちが持ち場でスタンバイしていて。
……先生いるし。
しかも、ハードル担当。
スポーツブランドのロゴが入ったTシャツに、下は黒のジャージ。
ごつめの白いスニーカーには、ネオンカラーのラインと、Tシャツと同じ黒いロゴ。
「………かわいい」
緊張しているにもかかわらず、ネイビーのキャップを被った先生の立ち姿に、ちゃっかりキュンとしてしまった。



