『運命の人』

『運命的な出会い』

華乃はその言葉をよく口にする。

今回も、もちろん。

「きっと、運命だと思うの」

なんて言っていた。


運命って、なんだろう。


もしも、先生が運命の人だとしたら。

………運命の、人だったとしたら。

きっと。


わたしは16歳ではなかったし。

先生も、「先生」ではなかった。


学校なんかじゃなくて。

どこか違った場所で。

もっと、違ったかたちで出会っていたはず。


そっか。

そうだよね。


認めたとたんにズキズキと痛む胸。


「ねぇ。せっかくだから、和葉も書けば?」

華乃がピンクのマジックを差し出して言った。

「えっ…、」

ズキズキと痛めた胸がドキンと跳ねる。


「ほら。内側にね、『あやのん』って」

「………あ、」

「和葉の、あやのんに対する感情は、もう恋なんじゃないかと思うの」

ふふふ、と笑った華乃。

「………いや。うん。わたしは、いいや」


びっくりした。

まさか、とは思ったけど。

気づいたのかと、焦ったけど。

そんなはず、ないよね。