「あった、あった」
わたしに背を向けて画鋲を拾う先生。
「………ぁ、」
白い、シャツ。
わたしに背を向けてしゃがむ、先生の姿。
同じだ。
蘇ってきたあのときの感覚に、心臓がドクドクと反応する。
今までとは違う、また別の感情が生まれてきてしまったのか。
感情に目印なんてつけていないから、はっきりとしたことは言えないけど。
のどの奥が。胸が。
きゅうっと締めつけられて。
苦しいのは確かだ。
「……先生、」
どうにかしてこの苦しみから抜け出したい。
ありがとうの言葉か、すみませんって言葉。
ずっと、言わなくちゃと思っていた言葉を。
ずっと引っかかっていた言葉を口にしたら、少しは楽になるかもしれない。
「うん?」
左手でプリントを持ち、右手だけで器用に画鋲をとめていく先生。
視線は掲示物に置いたまま。
どうか、そのままで聞いててほしい。
「………テストのとき、……保健室まで、連れて行ってくれて。ありがとう、ございました。
家まで送ってもらって、……ジュースも。
ずっと、言わなくちゃって、思ってたのに。
今ごろ、……すみません、」