「お父さんっ。これ、どうしたの?」
テーブルに置いてあったパッケージに入ったおもちゃの車をすくい上げる。
「ん?あぁ、それ。お茶を買ったらついてきた。
おまけだよ」
「そうなの?」
「なんだ。そんなものに興味があるのか?」
「………そういうわけじゃ、」
帰宅した父親が持ち帰ってきたのは、ペットボトルのお茶についてきた、おもちゃの車。
パッケージには『クラシックカー全8種』とある。
「欲しいならあげるよ」
「………うん、」
父親は腕時計を外しながら、女子高生の流行にはついていけないなぁ、と苦笑いする。
「べつに、流行ってるわけじゃないけど」
ただ。
はっきりとは憶えていないけど、色もかたちもこんな感じだったから。
多分、先生の車にあったのと同じ。
おもちゃの車を持って自分の部屋に戻ったわたしは、父親からの思わぬお土産に、少しばかりはしゃいでしまった。
なんだかドキドキが止まらない。



