「シノちゃん、」

何か借りてから帰ろうと本棚の前をウロウロしていたとき、不意に名前を呼ばれた。

わたしをシノちゃんと呼んだ彼女、

「ヒナちゃん。……と、」

隣には、見たことのない男の子。


「あ。カレシ。ふふふ」

「そうなんだー、」


同じ中学だったヒナちゃんとは、ゴールデンウィークに一度遊んだきり。

その頃よりも、なんだか大人っぽくなっていた。


あっちに行ってる、と、気を利かせた彼氏に小さく手を振って応えたヒナちゃん。

「久しぶりだねー。今日は?華乃も一緒?」

ワンピなんて着るようなタイプじゃなかったのに。


「ううん。わたしひとり」

「そっかー」

「彼氏、同じ高校のひと?」

「うん。クラスも一緒」

「よかったね。なんか、優しそう」

「うん。優しいよ。ふふふふふ」