知らない人ではない。
でも。
何ひとつ知らない。
知ってるけど、ぜんぜん知らない人。
なんだかもどかしい。
何かひとつでも知ることができたら、少しは違ってくるのかもしれない。
学校での先生のこと。
学校の外での先生のこと。
そう思ったわたしの意識がふわふわと彷徨いはじめる。
ゆっくりと走る車。
タイトルはわからないけれど、耳にしたことのある洋楽。
ダッシュボードに置かれたおもちゃの車。
ドリンクホルダーの、
「……オレンジ 、…ジュース」
意外、かも。
缶コーヒー片手に煙草、ってイメージだったから。
あ。
わたしの中にある男の人のイメージって、そんなものぐらいでしかなかったから。
てっきり、先生もそうなんだと思って。
オレンジジュース、飲むんだ……。
目にしたもの。
耳にしたもの。
ぜんぶが新鮮だった。



