「暇なショップだったからな、美穂のバイトしていたところは」
「新機種に変えたのに調子悪くなって・・・という、うそをついて会いにきてた
んだよね。あの時はわからなかったけど(笑)」
「そうだったっけ?」
「そうだよ、それにあのころはまだ付き合っていた馬鹿がいて・・・相談したんだよ、修に。すぐに別れられて驚いた!DVだったからね。あのままだったら私・・」
「そういう運だったんだよ、きっと」
別れた元彼がその後、どうなったか、美穂はくわしく知らない。
修にとっては、毎月の自殺者数のカウンターがパチリと1枚、まわっただけのことだ。

その後、都内の出版社に勤務し始めた美穂は、IT企業のSEをやっている修と週末のデートを繰り返してきた。
美人で性格の良い美穂のまわりには、会社でも男が集まることが多かった。
セクハラまがいのメールを送る上司に閉口した美穂は、修に相談をかけた。
「今日は例の企画で東京駅に18時くらいに作家の揚水さんと会うので
同席してくれない?その後、一緒に一杯どうかな?」
会社の帰りに下のフロアで待っている上司もいて、いよいようんざりすることが多くなった。当然、まわりの女性社員の目は自然と厳しくなった。それでなくてもアラサーやアラフォーが、周りにひしめいているのだから。