18時をまわったばかりだったが、外はもう薄暗かった。
12月に入ると急に寒くなり、路地を歩く人の影も早足になる。
「修!もういいぞ。たまには早く帰れよ」
男は振り返る。
小さなIT部品の下請け工場に修がきてからもうすぐ1年になる。
仕事が終われば遊ぶようなこともなく、帰宅する毎日だ。
たまに工場長が駅近くの居酒屋へ連れていってくれる。
東京にいる生活と全く違う。
ただ心は穏やかだった。

「おつかれさま」
工場を出ると一人の女性が入り口に立っていた。
「修、ひさしぶり」

「美穂?」

「忘れたの?」
「どうして?」