あれから半年。修とは全く連絡がとれない。
見事に痕跡が消えている。
元気になった美穂は、復職し以前と変わらず明るさを取り戻した。見た目には。

しかし家族には言わずに美穂は、修の痕跡を探し始めていた。
家出捜索隊というWEBへ申し込み、修の写真や情報を送った。
週末になると彼がいそうな場所を歩きまわった。ストーカーされていたという
いやな記憶は不思議となかった。ただ会いたかった。

仕事をするとしたら地方でIT関係じゃないだろうか。目立たない小さな会社でパソコンをさびしく叩いているのじゃないかとその姿が浮かんだ。
求人情報をくまなくチェックした。
会社で誘われる食事会や遊びは週末は一切、参加せず電話で用があるからといって
断る美穂を母は心配した。
「何をしているの、美穂?」
「心配しないで。何もおかしいことをしているんじゃないの。」

部屋に入るとPCを開く。メールがきていないか、確認する。
「ストーカーを愛して今は私がストーカーか」何か可笑しい。
修は今頃誰かと付き合って幸せになっているのかな?もしそうなっていたら・・・。
不思議とあの事件があっても修を思う気持ちは、変わらなかった。いや、むしろ強くなっているような気さえする。会いたい。
とにかく探す、絶対。命を助けてくれてそのまま逃げるようにいなくなるなんて、許さない。

「ずいぶんと元気になったね、もう大丈夫かい」
顔に似合わず優しい声ででてきたのは、担当刑事の黒木だった。
長野県警を訪ねた美穂は、修を探していることを黒木に話した。
「なんで?」
「お礼も言ってないんです。私は警察でも話しましたが彼に感謝しています。なのに突然と消えて・・・」
泣くと思ったのか、黒木は慌てて
「調書を取った時もあいつ、優しいんだな。あんたのことを好きでたまらなかったんだろ。だから消えたのさ」
「一言、お礼をいいたいのと元気でやっているのか、知りたいだけです」
「わしも知らん。ただこれからどうすんだ?と聞いたら、山梨に知人がいるとか・・たしか」そう言ってから黒木は
「ほっとくことだよ。お礼をいわなくても向こうもわかってる。それに・・・」
「それに何ですか?」
「相手はストーカーだ」