平成21年9月22日
美穂の入院している病院の待合室で小さなTVから音が漏れてくる。
いつもより少しやつれた美穂の母が、小さなTVの方へ眼を向ける。美穂は寝ている。
「警察の発表によりますと20日行方不明になっていた新藤美穂さんが発見された理由は、交際相手が彼女にGPSを付けて?彼女のストーカー行為をしていたため・・・だそうです。このようなケースは稀で新藤さんを車で跳ね拉致して長野の県道わきへ放置した男は本日、未明逮捕したとのことです。現在のところ被害者と全く面識がないと思われます」

それから1週間後、辻同病院に入院している美穂は、順調に回復していた。入院してから数日後に事情を母が教えた。
身体の傷の痛みより心の傷が大きかった。
「修は?修と会いたい」
「彼は会社も退職。一度、お詫びの電話がきたわ。自分のやったことは許されないし、もう2度と美穂に会わないって」
「だけどもし彼が見つけてくれなかったら、私はここにいない。いないのよ!お母さん」
「それはわかるけどストーカーともう付き合えないでしょう。刑事さんに聞いたらあれは病気で治らないって」
美穂はその言葉を聞くとまるで立ててあった分厚い本が倒れるようにベッドに突っ伏した。