平成20年4月10日
六本木ヒルズ
目の前に庭園が広がり、うっすらと東京タワーが見える。
「誕生日、おめでとう!美穂」
「ありがとう!修」
イタリア料理店の奥まった席を予約した2人の前には小さなケーキが用意されている。
お店のライトが少し暗くなると、数名のスタッフが席を取り囲み小さく拍手をしてくれる。
「おめでとうございます」
どこにでもあるワンシーンだ。
平日の夜は、どのお店もすいている。
ろうそくの灯りがゆらゆらと美穂の顔を動かす。
ろうそくは、人を一番綺麗に見せるそうだ。
もともとかなり美人系の顔が、さらに際立っている。

「来年はどこかに連れてくよ、どこで誕生会をやりたい?」
「本当?嬉しいわ。パリ?(笑)無理かなあ?結婚資金なくなってもこまるしね」
「パリ?大きく出たなあ。でも以前よりぐっと安くなったし、頑張るさ」修は笑う。
「これ、プレゼント。ブルガリのネックレス」
「えっ買ってくれたんだ。大丈夫?ありがとう」

2人が知り合ったのは、平成18年だった。携帯ショップに
修が来て、たまたま担当したのがバイトをしていた美穂だった。
「あんな出会いってあるのよね」
「2人を結びつけたのは、これだもんな。」
そういって修は携帯電話を取り出した。