会社の帰りに同僚と居酒屋に行って、裏道を通って美穂は、急いだ。
このあたりは住宅街で、裏道をつっきると駅まで10分以上は短縮できる、と
先輩に教わった。突然飛び出してきた大きな影にぶつかった。
失った意識が何度か戻り、自分の身体がぐらぐらっと揺れているのが
わかった。
何が起きたの?身体も動かず声もだせない。
「修」
かすかに出た声は、修という言葉だった。

美穂を乗せたままの棚沢の車を既に1台の車が追っていた。
修だった。美穂のバッグに入っている携帯電話は、ログを追跡するアプリが
入っていた。いわゆるカレログ。もちろん美穂には断っていない。
美穂の異変に気が付いた修は、その足ですぐにレンタカーを借りて
美穂を追った。

美穂は東京を出て山梨、長野に向かっているようだった。
男?最初はそう思ったが、今までのログ解析から
長野に土地勘があるような友人や関係者はでてこない。
都会から離れていく美穂の痕跡をみて、修は不安になった。
何か事件か。いずれにしても助けなければならない。

こんなことをすることが、悪いとか思ったことは全くない。
考えたこともない。
美穂を守るためだ。
そして自分を守るため。