乱暴者と無口ちゃん

背を向けた龍太郎。

結局小夜の顔など一瞥もしていない。

初めての出会いとしてはあまりに血生臭く、素っ気無い。

しかし。

「…………」

危ない所を助けてもらった事実には変わりない。

喋るのは苦手。

だが礼は言わなければ。

何事か言おうとする小夜よりも先に。

「大丈夫か?」

背を向けたまま龍太郎は言う。

コクコクと頷く小夜の気配だけは、龍太郎の背中越しに伝わってきた。