それが多少苦い想い出となっているのは、やっぱり先輩のあの発言が原因――なんだろうな。
先輩は、高校の中じゃ、背が高くて、かっこよくて、真面目な生徒の方が多かった中で、ちょっと危ない雰囲気を醸し出していて。
いい意味で、周囲から注目を浴びていた人だった。
学年の中で中心的人物と言ったらいいのか、そんな感じの先輩だった。
今、見ても、やっぱりかっこいいし――っていうか、歌もお世辞抜きにうまい。
なにをやってもサマになる人っているけど、タイプ的にそういう部類の人だったんだろう。
回顧しながら見ていたら、既に1曲目の終わりに差し掛かっていて、ステージ前で見ている生徒達の盛り上がりは、結構いい感じで。
初めて客観的に見たステージは、こんな感じだったんだって、初めて実感が出来た――。
「こういう時って、緊張するタイプ?」
不意な敦君からの質問。
だけど、答えたのは私ではなく、何故か尚輝だった。
「美紗は緊張はするけど、それにやられるタイプじゃなくて、その緊張感をある意味利用して、そういう中でベストを出しちゃうタイプ」
「へぇ、じゃあ、得な性格だ」


