彼は、理想の tall man~first season~


「えー、お待たせ致しました。準備が整いましたので、我が校人気ナンバーワンのバンド、いよいよ開演でーす! 皆さん大いに盛り上がっちゃって下さいねー!」


司会進行役員が、ステージ脇でスタートの合図。

その直後、元々半分しか付いていなかった体育館のライトがダウン。

キャーと、女生徒の黄色い声援が、体育館に響いていた。

直後、ドラムとギターの音が鳴り響く中、ステージの緞帳が上がった。


ステージ左側に、キーボードを前に立っているのは、私。

自分の女子高生な姿に、懐かしくも羞恥心に包まれた。


「あれが、美紗ちゃん?」

「――はい」

「これって、何年生の時?」

「高1の時、です」

「え、1年生? 随分と大人びてたんだね」


敦君の言葉に、苦笑いでしか返せなかった。

やっぱり、本気で恥ずかしい。

でも、当時の演奏を客観的に聴いたことがなかったから、私は苦笑いしつつも、耳はしっかりとテレビから流れる演奏をとらえといた。

ドラムが刻むリズム良し、ベースとのかみ合いも良し、ギターとのバランスも良し。

当時の自分を見つめながら、もう少しで私の弾き始めの箇所だよね、なんて――変に緊張感が高まる。