敦君がネジネジしているのを、私はカウンターから見守った。
やがて実がパキンと音を奏でて割れた。
案外簡単そう――そう思っていると、器具から実を外して、敦君は徐に立ち上がった。
そして、カウンター越しに、割れた実を、私に見せてくれた。
「わぁ、こんな感じになってるんだ」
焦げ茶の殻から白い実が半分顔を出している。
はい――と、差し出され、反射的に手のひらを出していた私。
敦君は、その実を私にくれた。
「ありがとう、ございます」
そのさり気ない優しさに、私はちょっとキュンとなった。
「普段食べるのと違って、実の甘さがあって、新鮮な感じで美味しかったよ」
受け取った実は手のひらで転がっていて、頭上からの言葉に、食べるの勿体ないな――なんて思いながらも、私は殻から実を取り出した。
いただきます――と、つぶやいて口に入れ、奥歯で数回噛み割ると、敦君の言葉通り、実の甘さと鮮度が広がった。
「――美味しい」
もぐもぐしながらそう言った私を見て、ふっと笑って敦君は元いた場所に戻っていた。
端から見たら、ほんの些細な行動かも知れないけど、なんとなく気にかけてくれているようで嬉しい。


