彼は、理想の tall man~first season~


ただ言っておきたかった、だけの話だったのかな?

そんな風に勝手に思って、言葉を返すでもなく、私は軽く小首を傾げるという状況へ逃げてしまった。

こんな態度でいいのかという気もしないでもないんだけど、だけど、なんか言いようがない。


グツグツと音を立て始めた鍋を見ながら、どうしたものかと考えていた。

けれど――

「なぁ、俺ってグレずに、よくここまで育ったと思わねぇ?」

なんて、笑いを含めたような晃の言葉に、私はなんだか拍子抜けしてしまった。


「ゴマはこんなもんか?」

「あ、うん、ありがと」

「次は?」

「次? じゃ、胡瓜スライスしてくれる?」

「はいよー」


晃はなにを気にするでもなく、普通な感じだった。

私は家庭内がぐちゃぐちゃしていたら、確かにグレてもおかしくなかった気もするけど、なんて考えていた。


晃は昔から明るい性格で、多少口は悪かったけど、気兼ねなく話が出来て、対外的にも好感は得られていたように思う。

それに、部活も勉強もどちらもしっかりやっていて――だから先生達からの信頼も厚くて。

高校2年と3年の時は、誰もやりたがらなかったクラス委員に抜擢もされていた。