ただ言っておきたかった、だけの話だったのかな?
そんな風に勝手に思って、言葉を返すでもなく、私は軽く小首を傾げるという状況へ逃げてしまった。
こんな態度でいいのかという気もしないでもないんだけど、だけど、なんか言いようがない。
グツグツと音を立て始めた鍋を見ながら、どうしたものかと考えていた。
けれど――
「なぁ、俺ってグレずに、よくここまで育ったと思わねぇ?」
なんて、笑いを含めたような晃の言葉に、私はなんだか拍子抜けしてしまった。
「ゴマはこんなもんか?」
「あ、うん、ありがと」
「次は?」
「次? じゃ、胡瓜スライスしてくれる?」
「はいよー」
晃はなにを気にするでもなく、普通な感じだった。
私は家庭内がぐちゃぐちゃしていたら、確かにグレてもおかしくなかった気もするけど、なんて考えていた。
晃は昔から明るい性格で、多少口は悪かったけど、気兼ねなく話が出来て、対外的にも好感は得られていたように思う。
それに、部活も勉強もどちらもしっかりやっていて――だから先生達からの信頼も厚くて。
高校2年と3年の時は、誰もやりたがらなかったクラス委員に抜擢もされていた。


