いきなり差し戻された、微妙なゾーンの話に、急に心臓がドクドクと鳴り出して、私は下手な緊張感で妙な苦しさを覚えた。
それでも、晃はお構いなしに、饒舌さを極めていった。
「うちは、家はあれど、居場所がなかったからな。誰も待ってない家に帰るのが苦痛で仕方なかった――離婚もしねぇで、よく今の今まで夫婦でいるもんだって思うけど」
「―――」
「世間体を気にして離婚をしなかったのかどうなのかは知ったこっちゃねぇけど。家族であっても、うちはまともな家族とは程遠いい――だから、美紗んちは、俺にとってはツボだった。いつ行ってもおばさんが笑顔で出迎えてくれて。尚輝も美紗もおばさんも、いつ行っても仲良い雰囲気で」
「―――」
「学校ではちょっとクールな感じの美紗も、家だといつもニコニコしててさ、家が普通に好きなんだろうなって思った時、将来いい妻でいい母親になるんだろうなって、そう思ったし」
どう受け取って、どう返すのが正解なのか――私には解らなかった。
だけど、晃は特に応えを求めている感じでもなくて。
手元をゴリゴリ動かしながら、なんならフッとうっすら笑いも浮かべていた。


