晃は、空気を読んだのか――話の向きを少し変えてくれた。
「そういうのは、やっぱり雰囲気で分かるもんなんだよな」
「うちは善くも悪くも、定期的に完全に離ればなれになるからね――かえってそれが良かったのかな?」
この発言は、晃の心情を想うとちょっと無神経な気もしたけれど、晃のさっきの発言は、私には対応出来るスキルが備わっていないから、晃の話に乗っかってしまっていた。
「おじさんが仕事ん時は、なんつうか、期間限定の遠距離状態だもんな」
「うん――お母さんも私も、お父さんのフライト中の無事を祈って、日本に帰って来るのを待ってた、かな」
「だから、俺、そういう家庭に憧れを持ったんだよ」
「え、そう、なの?」
「俺、物心ついた時には自分の親に幻滅してたから、結婚願望なんて芽生えなかったけど――美紗んちのおじさんとおばさん見てたら、なんか憧れたんだよな」
「―――」
「なんつうか、帰るべき場所には待っててくれる人がいて、勿論それに応える人がいて――それって、完全に居場所があるってことだろ?」
「――うん」
「だから、俺、余計お前に対して執着してたのかも」
「な、なに、いきなり」


