「ごめん、座って待っててくれる?」
「いや、なんか手伝う」
「え? あっ、じゃあ、ゴマすってくれると助かるかも」
「――は?」
「ほうれん草のゴマ和えを作ろうと思って」
「ああ、そういうことか」
「そういうことかって、他になにがあるのよ」
「いや、美紗にゴマすれってことかと不覚にも一瞬思った」
アハハなんて笑う晃に「なにそれ」なんて笑い返して、ゴマを入れた小さなすり鉢を渡した。
「ちと、手ぇ洗わせて」
「あ、うん」
置いていたボールを一旦シンクから取り出して、私は晃が手を洗うのを見ていた。
「で? これをゴリゴリすりゃいいのか」
「うん」
なんだか今日は割と素直だなって思いながら、私は鍋に目を移した。
「つぅか、やっぱ、美紗んちのかーちゃんは、いいよな」
「え? なに急に――もしかして、最近流行りの熟女好きにでもなった?」
「は? お前なんの冗談だよ。でもまぁ、美紗のかーちゃんなら、お前らの親じゃなけりゃ、なくもねぇか」
「え、ちょっと、気色悪いこと言わないでよ」
「気色悪いってお前――つうか俺は、んなコトが言いたかったんじゃなくてだな」
「なによ」


