彼は、理想の tall man~first season~


暫くジッとして、その状態をキープ。

ただ、さっきの一撃が最大級だったみたいで、徐々に雨も弱まり、雷も遠くなって、明るさが戻り始めた。

灰色の空はスカイブルーさを取り戻し、パァッと、あっという間に晴れ間が戻った。

それはホッとする瞬間。

だけど離れるのは、なんとなく寂しい。

それでも、もうこうしてもらって居られる理由もないから、そっと離れた。


「あの、ありがとうございました」

雷鳴劇場が終焉を迎えると、急に恥ずかしくなる。

それでも、言わなければいけないこともある訳で。

お礼を口にすると、「もう大丈夫?」なんて聞かれるから、黙って大きく頷いた。

なんだ、残念――なんて、冗談を言って笑う敦君につられて、私も笑うしかなく。

でも、そんな風に言って貰えたから、恥ずかしさはかき消されて、運転席の正位置に戻った。

そして肝心なことを聞き忘れていた私は、丁度思い出したタイミングで、それらを口にした。


「あの、昨日母が色々と持たせてくれた食材があるので、良かったら家で夕飯なんてどうですか?」

少しお待ちしてもらうことになりますが――なんて、言うのにかなりの勇気がいった。