「あ――絶対、顔上げちゃ駄目だよ」
自分の思考でいっぱいいっぱいだった私は、敦君が突然発した発言の真意が解らなくて――え?なんて、思っていた瞬間。
急に頭を抱えるようにされていて、耳を塞がれていた。
それは、一瞬の間の出来事で。
だけど、直後に凄まじい雷鳴が、敦君の手を隔てても聞こえて来て。
だから咄嗟に敦君の服を、ギュッと掴んでいた。
きっと、敦君には稲光が見えたから、今こうしてカバーしてくれたんだと恐怖の雷鳴で理解した。
雷がさっきよりも、一段と近くなって来た雰囲気があって、恐怖と不安で心臓がバクバクいってる。
私は、一刻も早くこのゲリラ雷雨が通り過ぎるのを、ただただ祈った。
――でも、今はひとりじゃないから大丈夫。
ひとりだったら間違いなく震えていたでしょう級な、そんな恐怖の雷鳴も、それをフォローしてくれる人がすぐ傍にいてくれる――。
強張った体を完全に敦君が受け止めてくれて、私の背中にまわっている右手で宥めるように、ゆっくり優しく穏やかに、トントンしてくれていた。
左手は、手持ち無沙汰なのか、私の髪の毛先部分を自分の指にくるくる巻き付けて解く――そんな遊びを繰り返していた。


