ただ――こういうキスは、過去にしたことはあっても、そこまで長いものではなかったから。
私はブレスのタイミングが判らなくて、気付けば限界で――。
敦君の服をギュッと握ると、そっと唇が離れた。
水面から顔を上げるが如し――そんなに大胆な息継ぎは出来なかったけど、放された瞬間、小刻みに息をして、それから深く呼吸をした。
そんな私の状況を察知して、敦君はふっと小さく息を漏らすように笑うから、私の顔は一気に熱くなる。
不慣れさを露呈――つまりは、経験値の低さを悟られたということになる。
キスのひとつやふたつで、動揺しているのなんて、子どもかって思われていないか不安になるし。
遊んでいない程度に――それなりに大人だって思われたかったな――なんて、変な見栄が生まれていた。
だからって、下手に小慣れた感じを繕うことなんて、私には無理なんだけど。
それでもやっぱり、誰かと比べられていないか不安になる。
敦君みたいなタイプなら、ほっといても女性が寄って来そうだし。
私と敦君の経験値なんて、比べるとかいう次元じゃないくらいの差がありそうだし。
現に今のキスを考えても、器用に巧い感じだった。


