彼は、理想の tall man~first season~


お互いに無言。

雷雨と風の音と、ほんの少しの互いの息の音しか聞こえない車内。

新車特有の匂いと、敦君の服から柔軟剤の爽やかな香りが、私の鼻をくすぐる。

私の髪に軽く触れながら、落ち着いた感じの敦君は、こういう状況には慣れているのか――。


そう思ってしまうと、ちょっと気も沈んでしまうけれど――今は私だけのもの。

これからも私だけのもの?


そう思いながら、顔をちょっとだけ上げると、微かに視線が絡まった。

って、そう思った瞬間、おでこに軽く敦君の唇が触れて。

キスをされたと認識した直後、本物のキスが待っていた。


車の中でのキスなんて、私には初めてのことで、そのキスに軽くテンパる。

しかも、ちょっと体勢がキツくなって来ていたりだったから、腰が痛くなっててつらい。

少しだけ位置をと思って身を動かした瞬間、敦君が私の腰を引き寄せた。

それによって、体勢的には凄く楽にはなったけれど――キスが深いものに変わって、私のテンパりも軽くからかなりに変わった。

だけど、刺激的というか、官能的というか――そんなキスによって、何も考えられなくなる。

外の雷雨の音とか、気にしている余裕さえ奪われていた。