お互いに無言。
雷雨と風の音と、ほんの少しの互いの息の音しか聞こえない車内。
新車特有の匂いと、敦君の服から柔軟剤の爽やかな香りが、私の鼻をくすぐる。
私の髪に軽く触れながら、落ち着いた感じの敦君は、こういう状況には慣れているのか――。
そう思ってしまうと、ちょっと気も沈んでしまうけれど――今は私だけのもの。
これからも私だけのもの?
そう思いながら、顔をちょっとだけ上げると、微かに視線が絡まった。
って、そう思った瞬間、おでこに軽く敦君の唇が触れて。
キスをされたと認識した直後、本物のキスが待っていた。
車の中でのキスなんて、私には初めてのことで、そのキスに軽くテンパる。
しかも、ちょっと体勢がキツくなって来ていたりだったから、腰が痛くなっててつらい。
少しだけ位置をと思って身を動かした瞬間、敦君が私の腰を引き寄せた。
それによって、体勢的には凄く楽にはなったけれど――キスが深いものに変わって、私のテンパりも軽くからかなりに変わった。
だけど、刺激的というか、官能的というか――そんなキスによって、何も考えられなくなる。
外の雷雨の音とか、気にしている余裕さえ奪われていた。


