「こっち、おいで」
後頭部に何かが触れ――それが敦君の手だと分かった瞬間、胸の奥がキュン、ってなった。
運転席と助手席の間にあるアームレストをどけて、フラットになっている運転席と助手席の座席を広く取る敦君。
それを顔を少し上げて見ていた私は、敦君と目が合った瞬間、その目で誘導させられていて、自分の体を敦君の体にポスンと預けていた。
私の体を受け止め易いようになのか――少しだけ腕と座る位置を変えると、敦君の体内から、ふぅーっと息が抜けるのが分かった。
その刹那、なんだか妙にホッとして、私の体からも変な力が抜けていた。
普段なら、大嫌いな雷鳴も、こうしていると――嫌いは嫌いだけど、なんとかなって――時たまビクッとしながらも、そのまま受け止めてもらっていた。
ただ、随分とカップルらしく感じられる今の体勢に、今度は恥ずかしさで、顔が熱くなる。
狭い密室の車内で抱き合っているような今の体勢は、私には不慣れな状態。
決して嫌ではないけれど、どうしていいのか分からないみたいな感じで、いつまでこの体勢でいていいのか――この後、どうなるのか。
ゲリラ雷雨が止むのを、ただじっとそのまま待てばいいのか。


