「尚輝なら、問題なく乗り切れると思うから、そんなに心配そうな顔しなくても大丈夫だよ」


私の表情を読み切ったらしい敦君は、ヤバそうな時は、小川か俺がフォローいれるし――と、完全に私の気持ちを宥めてくれた。

そういう雰囲気からしても、尚輝が敦君を慕う気持ちが良く解る。

小川さんとも随分慣れ親しんだ感じだったから、私の心配なんて尚輝からしたら、いい意味で無用なんだと思わされた。


でも、それは、単に他人に甘えるとかではなくて。

リカバリーが出来る人が周りにいてくれるからこそ、自分を追い込んで高めることが可能な環境であって。

頼りになる先輩がいなければ、それは勿論自分の力でどうにかしなければだけれど。

本当に窮地の時に、そのお手本になってくれる人がいるかいないかでは、大分違ってくる。


私にも昔は心強いお手本な人がいてくれて、何度となくピンチを救ってもらったから、今の尚輝の環境は、羨ましい限りだ。


まぁ、私のお手本というのは、嬰のマスターの事なんだけど。

あの人の下でなかったら、とてもじゃないけどBARの演者は勤まらなかったと、今になって考えるとそう結論づけられる。