昔は、こんな風に、誰かにこうしてもらえることを、夢見ていたけど。
現実は、女友達を庇って、自分は強風に耐えていた。
だから、いとも簡単に、こうして私を女の子扱いしてくれるのだから――敦君って驚異的だ。
男子からも、隣に立つことを敬遠されていた時代だってあったのに、すっぽり私を隠してくれるんだもん。
ドキドキしない方がおかしなくらいで、惚れない方がおかしいんだと思う。
普段纏め上げていた髪は、今日に限っておろしていて、強風の所為で完全に乱れてしまった。
だけど、なんとなく――敦君の指先が髪に触れている気がしないでもない。
なんとなく整えてくれているようにも思う。
風はおさまっている感じにはなったけど――。
恥ずかしくて顔を上げられないでいた私は、完全に顔を上げるタイミングを見失って。
今度はそれをどうしようかという焦りによって、変にドキマギしていた。
だけど、こういうことに一々反応している自分を、どうかと思ってしまった。
今更この図体で、なにを変にドキドキしちゃってるんだか――女子的な部分で、急に恥ずかしくなった。
そんなガラでもないでしょってな具合だ。


