『余所余所しい雰囲気を打破するには、会話の仕方と、あと必要なのはボディータッチね』
今日、智子との電話で、そんなことを言われたのを急に思い出した私は、隣に座る敦君を一目した。
ボディータッチって所謂あれでしょ?
女子が男子に、『ねぇねぇ』とか言う時とか、『やだー』とかって、会話の最中にさり気なく触る、学生期の飲み会で良く目にしたあれでしょ?
間違いなく素面な状態じゃ無理な行為で、私には、間違っても気安く出来ることじゃない。
ゴールが正真正銘の恋人だとするなら、ハードルが幾つもあって。
一体幾つのハードルを飛び越えたら、ゴールになるんだろう?
私の今の状態だと、助走が相当長くて、ハードルを飛び越えてすらいない気が――。
タメ語で会話というのが、一つ目のハードルだとしたら、それをまず越えようとして走り出したばかりだ。
それでも、敦君に出会ってからソワソワして止まない日常というものが新鮮で。
会いたいと思うことは度々で、連絡がなければ不安になってなんだか落ち着かず――脈の振れが激しい。
女として完全に終わっていた感が否めなかった私が、まさか恋をするなんて状態だけど。


