――交換条件?
黙っててあげるから、口止め料とか?
いやいや、敦君はそういう人じゃないと思うけど。
何を言われるのか、ドキドキしながら言葉を待った。
「届いたら、何か弾いて聴かせてくれる?」
「――はい? え、はい」
予想外だった言葉にちょっと気が抜けて、笑って私は頷いた。
そんな朝飯前的な感じのことが交換条件でいいのかとも思うけど。
聴きたいと思ってくれるなら、なんだって弾く気になる。
「ね、変な話、電子ピアノっていくらくらいするものなの?」
「えっ、と――手頃な物は、片手でも買えるけど、やっぱりいいやつはそれなりに、」
「じゃあ、そのいいやつを買って貰ったんだ」
その問いには、もう苦笑いするしかなかった。
本当は、普通のピアノを買う勢いだった父。
本物志向の強い父に、昨日ばかりは困りもしたけれど。
電子ピアノじゃないと夜練習が出来ないからと言って、電子ピアノを買ってもらったのだ。
そして、電子ピアノの中でも性能の高いものを選んだ父。
即断即決した父に、店員さんも呆気に取られていた。
お母さんに相談もなしに買ってもいいの?とか、父には一応言ってみたけれど。


