「――でも、マンションに持ち込むには、丁度なサイズを」

「あははっ、なんか凄いな」


昨日買いに行ったのは、本当に服を買って貰うことが目的だった。

だけど、父から服とか靴以外に何か欲しい物はないのかと聞かれて、軽い気持ちでピアノが欲しいと口にした。

そしたら、誕生日プレゼントはそれでいいか?みたいな雰囲気になって。

デパートの某楽器店で、父は本当に電子ピアノを買ってくれたのだ。

ただ、なんでも父に買って貰う私の根性を、尚輝は好くは思っていないから。

父には尚輝には内緒で買ってもらったのだ。


「あの、尚輝には、搬入する日まで秘密のことなので、」

「尚輝には内緒で買ってもらったの?」


私が頷くと、敦君は再び笑い出した。


「尚輝にバレたら、絶対に怒られるから」

「それ、搬入の日まで黙ってたら余計に怒るんじゃないの?」

「そうなる前だと、多分キャンセルして来い、だとか言われるから、」

「なるほど、ね」

「搬入されちゃえばこっちのものかな、みたいな作戦で」

「解った、尚輝には秘密ね。その代わりさ、」

「――はい?」


その代わりさ、って、なんだろう?